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知っていますか?ロゴの「著作権」について
「著作権」と言うと、「著作権の侵害が…」といったトラブルが度々ニュースになっているので、「何となくは知っている」という方が多いかもしれませんね。
実は、「著作権」について知っておかないと、せっかく作ったロゴが使えなくなることもあるのです。そういった事がないよう、「著作権」についてきちんと理解しておきましょう。
■目次
-そもそも「著作権」とはどんな権利?
・「著作権」とは「知的財産権」のうちのひとつ
-ロゴの「著作権」は誰のもの?
・ロゴ作成の依頼主は「著作者」ではない
-ロゴの「著作権」の譲渡について
・ロゴの「著作権」は必ずしも「ロゴ作成料」に含まれていない!?
・「著作権」は譲渡してもらった方が良い?
・「著作権」の譲渡で気をつけるポイント
・「著作権」譲渡後のトラブルを避けるには?
-ロゴの「著作権侵害」トラブル事例
・著作権侵害の判断基準とは?
・「鳥貴族」と「鳥二郎」ロゴ類似裁判
そもそも「著作権」とはどんな権利?
「著作権」という言葉はよく耳にすることがあると思いますが、そもそもどんな権利を指すのか、ご存知でしょうか?
まずは、「著作権」について解説いたします。
「著作権」とは「知的財産権」のうちのひとつ
「著作権」とは、「知的財産権」という権利の中のひとつを指します。
「知的財産権」については、特許庁にて下記のような説明があります。
“知的財産権制度とは、知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度です。”
「知的財産権」は「著作権」を含め、下記の3つに分類されます。
- 産業財産権(工業所有権)…産業に関わる権利(特許権、商標権など)
- 著作権…文化に関わる権利
- その他の権利(肖像権など)
「著作権」は、創作物を創った人=「著作者」に対して自然に発生する権利で、「申請して得られる権利」ではありません。
反対に、「特許権」や「商標権」などは、取得することで得られる権利になります。「特許」や「商標登録」は、これにあたります。
ロゴの「著作権」は誰のもの?
あらゆる創作物は、それを創った人=「著作者」の財産…ということは、「著作権」は「著作者」が持っていることになります。
では、ロゴ作成を外注した場合、「著作権」は誰が持っているのでしょうか?
ロゴ作成の依頼主は「著作者」ではない
ロゴの「著作権」を持っているのは、実はロゴ作成の依頼主ではなく、ロゴを作った「デザイナー」(ロゴ作成会社の場合は、「ロゴ作成会社」または「担当デザイナー」)なのです。
でも、出来上がったロゴはデータで納品されて、依頼主側で使うことができますよね。
これは、著作者が依頼主に対してロゴの使用を認めている為「使える」のであって、「ロゴの権利を放棄した」訳ではありません。
例えば、依頼主が納品されたロゴのデザインを、「やっぱり、もうちょっと変えたいな…」と考えたとします。
もし著作者(デザイナーまたはロゴ作成会社)がロゴの「著作権」を依頼主に譲渡していない場合、勝手にデザインを変更すると、「著作権の侵害」となってしまいます。
また、ロゴを使って販売物を作る場合は利益が発生することから、著作者の許可が必要になることもあります。
ロゴの「著作権」の譲渡について
ロゴの「著作権」は必ずしも「ロゴ作成料」に含まれていない!?
ロゴ作成を外注した際、「ロゴ作成料」を支払ったからと言って、必ずしもロゴの「著作権」までを“買い取った”ということにはなりません。
「ロゴ作成料」はあくまで“デザイン作業に対する対価”なので、依頼主がロゴの「著作権」の譲渡を希望した場合、「ロゴ作成料」とは別に、「著作権料(譲渡料)」が発生することもあります。
もし、「ロゴ作成料」に「著作権料(譲渡料)」を含んでいたとしても、ロゴの著作権を譲渡する証明書の「発行料(証明書料)」を支払わなければいけない場合もあります。
また、中には「著作権は譲渡しない」とするデザイナーやロゴ作成会社もあります。
このように、デザイナーやロゴ作成会社によってロゴの「著作権」の扱いは様々なので、ロゴ作成を外注する際は、下記について確認するようにしましょう。
- 「著作権」は譲渡される?されない?
- 「著作権料(譲渡料)」は「ロゴ作成料」に含まれる?含まれない?
- 「著作権料(譲渡料)」にかかる金額は?
「著作権」は譲渡してもらった方が良い?
「ロゴ作成料」に「著作権料」が含まれていない場合、「著作権料」を払ってまで「著作権」を譲渡してもらう必要があるのかどうか…多くの方は気になるところではないでしょうか?
先述しましたが、納品されたロゴは“使用許諾されているだけ”なので、「著作権」の譲渡が無いままデザインの変更はできません。
また、ロゴを使用するにあたり、著作者と細かな取り決めをしておかないと、後から「名刺には使って良いけど、チラシやWebサイトには載せないで」と言われてしまうことも…。
せっかく「自分のもの」になったはずのロゴが、好きなように使えないというのはとても不便です。
ロゴは、様々に活用してこそ価値の生まれるモノです。その為にも、「著作権」を譲渡してもらうことをおススメします。
「著作権」の譲渡で気をつけるポイント
「著作権」が譲渡されれば、ロゴをどんな風に扱っても大丈夫!…と、言う訳ではありません。
実は「著作権」の中に、“「著作者」から譲渡できない権利”があります。
それは「著作者人格権」という権利です。
「著作権」には「著作者」だけが持つ権利があり、「著作人格権」と「著作権(著作財産権)」という2つに分類されます。
- 著作者人格権…著作者が著作物に対して、どう扱うか・名前を公表するかといった事などを決められる権利
- 著作権(著作財産権)…著作物を印刷・上映したりするなどの権利
「著作者人格権」は「著作者」だけが持つことができ、尚且つ法律で“譲渡できない”と決まっている権利です。
ですので、“「著作権」を譲渡する”というのは、厳密に言うと“「著作財産権」の方だけを譲渡する”という意味になります。
その為、ロゴの「著作権」が依頼主に譲渡された後でも「著作者」からロゴの使用について意見することができ、場合によっては“ロゴの使用禁止”といったトラブルに発展することもあるのです。
「著作権」譲渡後のトラブルを避けるには?
「著作権を譲渡してもらっても、トラブルになるなら譲渡の意味がない」と思われるかもしれませんが、これには対処法があります。
「著作権」の譲渡の際に、「著作者」に対して“「著作者人格権」を行使しない”という取り決めをするのです。
ロゴに限らず、「著作物」は「著作者」にとって特別な思い入れがあるモノです。
「著作物」が「著作者」の思いと違った使われ方をしてしまった場合、先述したようにトラブルが発生する場合もあるので、“「著作人格権」を行使しない”という取り決めの有無が重要なポイントとなってきます。
ロゴの「著作権侵害」トラブル事例
では次に、「著作権」でよくあるトラブル「著作権侵害」について、解説いたします。
ロゴをデザインした際、意図せず“すでにあるロゴ”と似てしまった、となることもあるでしょう。
「でも、真似した訳ではないから…」と、そのままロゴを使い続けると、“すでにあるロゴ”の著作者から「著作権侵害」で訴えられてしまうかもしれません。
著作権侵害の判断基準とは?
実は、「何となくロゴデザインが似ている」というだけで、すぐに「著作権侵害」となる訳ではありません。
「著作権侵害」となるには、ロゴデザインにおいて下記の2点がポイントとなります。
- 依拠性…すでにあるロゴを知った上で、そのロゴに基づいて(真似るなどして)新しいロゴを作っている
- 類似性…新しいロゴが、すでにあるロゴと共通点があるかどうか
“何となく似ているだけでは、すぐに「著作権侵害」にならない”と言いましたが、こういったトラブルはできるだけ避けたいですよね。
ロゴデザインが完成する前に「新しく作ったロゴが、“すでにあるロゴ”の中に似ているモノはないかどうか」は必ず調べるようにして、「著作権侵害」のトラブルを避けましょう。
※類似ロゴの調べ方については、【ロゴ作成を依頼!発注先に確認すべきこととは?】の記事内でご紹介しています。ぜひ、併せてご覧ください。
それでは次に、ロゴの「著作権侵害」で実際にあったトラブルをご紹介します。
「鳥貴族」と「鳥二郎」ロゴ類似裁判
「鳥貴族」のロゴ 引用元:鳥貴族公式ホームページ
この騒動についてはテレビでも取り上げられていたので、記憶に残っている方が多いかもしれません。
2015年、居酒屋系焼鳥屋「鳥貴族」が、同じく居酒屋系焼鳥屋「鳥二郎」に対して提訴した問題です。
※この件では「鳥二郎」に対して賠償請求もありましたが、ロゴの類似に絞ってご紹介します。
「鳥貴族」は「鳥二郎」に対し、“ロゴが似ている”という理由でロゴの商標使用差し止めを求めました。実は、「鳥二郎」のロゴは商標登録されていたのです。
「鳥二郎」のロゴ 引用元:特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
この裁判ではロゴの類似性は認められず、「鳥二郎」ロゴの商標の差し止めはされませんでした。両者のロゴのパッと見の印象は似ていますが、なぜ類似が認められなかったのでしょうか?
「鳥貴族」は有名なお店なこともあり、ユーザーが「鳥貴族と思って店に入ったら、鳥二郎だった」ということもあったようです。ユーザーが見間違えてしまうほど、両者のロゴは“似ている”ということです。
ですが、ロゴデザインの細かな部分をよくよく見ていくと、実は“同じデザイン”という訳ではありません。印象としては“似ている”と感じる両者のロゴですが、裁判所では感情的ではなく、客観的に判断されます。
その為、“裁判所としては”両者のロゴは“類似ではない”との判断が下されたのです。
ロゴのデザインが類似に当たるかどうかについては、素人ではなかなか判断がつかない為、事前に類似ロゴを調べておくことはトラブルを避けるのに有効となるのです。
「著作権って、ややこしいな…」と感じるかもしれませんが、下記のことに気をつければ、トラブルを避けることは可能です。
- 「著作権」は譲渡してもらい、「著作者人格権」は行使しない取り決めをする
- 「著作権侵害」のトラブルを避ける為に、類似ロゴは調べておく
ぜひこの記事を参考にして、トラブルの無いようロゴを活用してくださいね。
お困りのことがございましたら、お気軽にこちらからお問い合わせください。